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レガシーシステムのモダナイゼーションとは?進め方や成功ポイントを解説

モダナイゼーションとは、古いシステムを現代的な技術やアーキテクチャに刷新する取り組みを指します。単なるシステム更改ではなく、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる基盤を構築することが目的です。

本記事では、モダナイゼーションの基本概念から具体的なメリット、実施手法、そして成功のポイントまで体系的に解説します。システム刷新を検討している企業の経営層やIT部門の方々に、実践的な指針を提供できるでしょう。

レガシーシステムのモダナイゼーションとは

モダナイゼーションは、企業のIT基盤を現代化し、ビジネスの競争力を高めるための戦略的取り組みです。ここでは、モダナイゼーションの定義や関連用語との違い、そして取り組むべき背景について解説します。

  • モダナイゼーションとは
  • モダナイゼーションとレガシーマイグレーションの違い
  • モダナイゼーションの重要性

モダナイゼーションとは

モダナイゼーションとは、古い技術で構築されたシステムを、最新の技術やアーキテクチャに刷新する取り組みを指します。単に老朽化したハードウェアを入れ替えるだけでなく、クラウド技術やマイクロサービスアーキテクチャなど、現代的な設計思想を取り入れることが特徴です。

モダナイゼーションの目的は、技術的負債の解消だけでなく、DX推進やイノベーション創出を可能にする基盤を構築することにあります。

従来のメインフレームやオンプレミス環境で稼働していたシステムを、クラウドネイティブな環境へ移行することが代表的な例といえます。これにより、システムの柔軟性や拡張性が大幅に向上し、ビジネスの変化に迅速に対応できるようになります。

モダナイゼーションとレガシーマイグレーションの違い

モダナイゼーションとレガシーマイグレーションは、しばしば混同されますが、その意味合いは異なります。レガシーマイグレーションは、既存システムを別のプラットフォームや環境に移行することを指す広義の用語です。

一方、モダナイゼーションは、単なる移行にとどまらず、システムの構造や設計そのものを現代化することを含みます。たとえば、モノリシックなアーキテクチャをマイクロサービス化したり、API連携を前提とした設計に変更したりする取り組みが該当するでしょう。

つまり、レガシーマイグレーションはモダナイゼーションの手段の一つであり、モダナイゼーションはより包括的な概念といえます。

モダナイゼーションの重要性

経済産業省が2018年に公表したDXレポートでは、「2025年の崖」という問題が指摘されました。これは、2025年までにレガシーシステムの刷新ができなければ、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるという警鐘です。

また、企業の基幹システムとして広く使われているSAPのECC 6.0が2027年にサポート終了を迎える「2027年のSAP問題」も深刻です。サポート終了後はセキュリティリスクが高まり、法令対応やシステム障害時のサポートが受けられなくなります。

こうした背景から、モダナイゼーションは単なるIT課題ではなく、企業の存続に関わる経営課題として認識されています。

レガシーシステムのモダナイゼーションのメリット

モダナイゼーションは、企業に多面的な価値をもたらします。その影響はコスト削減から競争力強化まで、そのメリットは経営全体に及びます。

  • 業務効率化や生産性の向上
  • システムを安定させ、セキュリティを強化
  • 運用コストを削減
  • データドリブンな経営
  • 競合への優位性の獲得

業務効率化や生産性の向上

モダナイゼーションにより、システムの応答速度が向上し、業務処理の効率が大幅に改善されます。クラウド環境への移行により、リソースの柔軟な拡張が可能になり、繁忙期のパフォーマンス低下も解消できるでしょう。

また、API連携やマイクロサービス化により、他のシステムとの統合が容易になります。これにより、部門間のデータ連携がスムーズになり、二重入力や手作業による転記作業を削減できます。

さらに、ユーザーインターフェースの改善により、従業員の操作性が向上することも期待できるのがメリットです。直感的な画面設計やモバイル対応により、どこからでも業務を遂行できる環境が整います。

システムを安定させ、セキュリティを強化

システムの安定性とセキュリティ強化は、企業の信頼性を高め、コンプライアンス要件への対応も容易にします。

古いシステムは、ハードウェアの老朽化やソフトウェアのサポート終了により、障害リスクが高まります。モダナイゼーションにより、最新の安定したプラットフォーム上でシステムを稼働させることで、予期せぬダウンタイムを大幅に削減できるでしょう。

セキュリティ面では、サポートが終了したOSやミドルウェアの脆弱性が放置されるリスクが解消されます。最新のセキュリティパッチが適用され、暗号化やアクセス制御などの機能も強化されます。

また、クラウドサービスを活用することで、ベンダーが提供する高度なセキュリティ機能を利用できます。定期的なバックアップや災害対策も自動化され、事業継続性が向上します。

運用コストを削減

レガシーシステムの保守には、専門技術者の確保や高額な保守契約が必要です。しかし、モダナイゼーションにより、標準的な技術スタックへ移行することで、人材確保の難易度が下がります。

クラウド環境への移行により、ハードウェアの購入や更新、データセンターの維持管理コストも不要になる点もメリットです。従来と異なりクラウド環境は従量課金制のものが多く、実際の使用量に応じたコスト最適化が可能になるでしょう。

また、自動化ツールの活用により、運用監視やパッチ適用などの定型作業が効率化されます。運用担当者は、より戦略的な業務に時間を割けるようになります。

データドリブンな経営

データドリブンな経営は、競争優位性の源泉となり、新たなビジネス機会の発見にもつながります。

モダナイゼーションにより、蓄積されたデータの活用が飛躍的に進みます。レガシーシステムに閉じ込められていたデータが、分析基盤へ容易に連携できるようになり、ビジネスインテリジェンスやAI活用の土台が整うのは企業にとって大きなメリットです。

リアルタイムデータ分析により、経営判断のスピードと精度が向上します。市場の変化や顧客ニーズを迅速に把握し、機動的な戦略変更が可能になるでしょう。

また、データの可視化により、部門を超えた情報共有が促進されます。経営層から現場まで、同じデータを基に議論できる環境が整い、組織全体の意思決定品質が高まります。

競合への優位性の獲得

モダナイゼーションにより、新サービスの市場投入スピードが大幅に向上します。アジャイル開発やDevOpsの実践が容易になり、顧客ニーズへの迅速な対応が可能になるでしょう。

最新技術の活用により、競合他社との差別化も図れます。AI、IoT、モバイルアプリなど、先進的なサービスを素早く提供できる企業は、市場での優位性を確立できます。

また、柔軟なシステム基盤は、M&Aや新規事業への参入を容易にします。事業環境の変化に対応できる適応力が、長期的な競争力の源泉となります。

レガシーシステムのモダナイゼーションの手法

モダナイゼーションには複数のアプローチがあり、システムの特性や制約条件に応じて最適な手法を選択する必要があります。

  • リプレイス
  • リホスト
  • リライト
  • リファクター
  • リドキュメント
  • リタイア
  • リテイン

リプレイス

リプレイスとは、既存システムを新しいパッケージソフトウェアやSaaSで置き換える手法です。自社開発のシステムを、ERPやCRMなどの標準的な製品に移行することが代表的な例といえます。

この手法のメリットは、開発期間とコストを大幅に削減できることです。また、業界のベストプラクティスが組み込まれた製品を導入することで、業務プロセスの改善も期待できるでしょう。

ただし、自社の業務に合わせた過度なカスタマイズは避けるべきです。カスタマイズが増えると、保守コストが上昇し、製品のバージョンアップも困難になります。

リホスト

リホストは、アプリケーションのコードをほとんど変更せず、新しいインフラ環境に移行する手法です。「リフト&シフト」とも呼ばれ、オンプレミスからクラウドへの移行で頻繁に採用されます。

移行期間が短く、リスクも比較的低いことが最大のメリットです。既存のアプリケーションロジックをそのまま使えるため、大規模な再開発が不要になります。

しかし、クラウドネイティブな機能を十分に活用できないため、コスト最適化や柔軟性の向上は限定的です。リホストは、第一段階として位置づけ、段階的にさらなる最適化を進める戦略が推奨されます。

リライト

リライトは、既存システムの機能を維持しながら、最新の技術スタックで完全に再構築する手法です。アプリケーションのコードをゼロから書き直し、現代的なアーキテクチャを採用します。

この手法により、技術的負債を完全に解消でき、保守性や拡張性が大幅に向上します。マイクロサービスアーキテクチャやコンテナ技術など、最新の設計パターンを取り入れることが可能です。

一方で、開発期間とコストが最も大きくなる手法でもあります。要件定義から詳細設計まで、すべてのフェーズを実施する必要があるでしょう。

リファクター

リファクターは、既存コードの外部仕様を変えずに、内部構造を改善する手法です。コードの可読性や保守性を高め、将来の拡張を容易にすることが目的となります。

モノリシックなアプリケーションを段階的にマイクロサービス化する際にも、この手法が活用されます。機能を少しずつ分離し、独立したサービスとして再構築していくアプローチです。

リファクターは、全面刷新に比べてリスクが低く、段階的な改善が可能です。ただし、計画的に進めないと、中途半端な状態で停滞するリスクもあります。

リドキュメント

リドキュメントは、既存システムのドキュメントを整備し、仕様を明確化する取り組みです。長年の改修により仕様書が失われたり、実装との乖離が生じたりしているシステムで必要となります。

ソースコードの解析やリバースエンジニアリングにより、現在の仕様を正確に把握します。これにより、将来の改修や刷新プロジェクトの基礎資料が整います。

リドキュメント自体はシステムの機能を変更しませんが、後続のモダナイゼーション活動を成功させるための重要なステップです。

リタイア

リタイアは、不要になったシステムやアプリケーションを廃止する手法です。業務の変化により利用頻度が低下したシステムや、他のシステムに機能統合されたシステムが対象となります。

保守コストを削減し、IT環境をシンプルにすることで、全体の運用効率が向上します。また、不要なシステムを廃止することで、セキュリティリスクも低減できるでしょう。

ただし、データの保管期間や法的要件を考慮し、適切なアーカイブ処理が必要です。将来的に参照が必要なデータは、適切な形で保存する必要があります。

リテイン

リテインは、現状のシステムをそのまま維持する選択肢です。モダナイゼーションの必要性が低く、安定稼働しているシステムについては、無理に刷新する必要はありません。

ただし、リテインを選択する場合でも、定期的な見直しは必要です。技術環境の変化やビジネス要件の変化により、将来的にはモダナイゼーションが必要になる可能性があります。

また、リテイン対象のシステムでも、監視体制の強化やバックアップの整備など、リスク管理は継続すべきです。

モダナイゼーション成功のポイント

モダナイゼーションを成功させるには、技術的な準備だけでなく、組織的な取り組みが必要です。

  • 現行のITシステムを可視化する
  • 余裕をもって移行スケジュールを立てる
  • モダナイゼーションの目的を明確化する

現行のITシステムを可視化する

モダナイゼーションの第一歩は、現状の正確な把握です。稼働中のすべてのシステムを洗い出し、利用技術、依存関係、データフロー、保守状況を詳細に記録します。

ブラックボックス化したシステムについては、ソースコード分析やドキュメント復元が必要です。システムの複雑さや技術的負債の大きさを定量的に評価することで、移行の難易度とコストを見積もれます。

また、システム間の依存関係マップを作成し、影響範囲を可視化します。一つのシステム変更が他に及ぼす影響を把握することで、移行リスクを最小化できるでしょう。

余裕をもって移行スケジュールを立てる

モダナイゼーションは、想定外の課題が発生しやすいプロジェクトです。技術的な困難、データ品質の問題、ステークホルダー調整など、さまざまな要因で遅延が生じる可能性があります。

そのため、スケジュールには十分なバッファを設けることが重要です。とくにデータ移行や並行稼働のフェーズは、予想以上に時間を要することが多いでしょう。

また、段階的な移行アプローチを採用し、リスクを分散させることも有効です。小規模なシステムで成功体験を積み、ノウハウを蓄積してから大規模システムに挑戦する戦略が推奨されます。

モダナイゼーションの目的を明確化する

技術刷新そのものを目的とするのではなく、解決すべきビジネス課題を明確にすることが成功の鍵です。コスト削減、市場投入スピード向上、新規事業への対応など、具体的な目標を設定します。

目的が明確であれば、手法の選択や優先順位の判断も容易になります。また、プロジェクトの進捗や成果を測定するKPIも設定でき、経営層への説明責任も果たせるでしょう。

さらに、ステークホルダー間で目的を共有することで、組織全体の協力を得やすくなります。業務部門とIT部門が同じゴールを目指すことが、プロジェクト成功の前提条件です。

まとめ

レガシーシステムのモダナイゼーションは、企業の競争力を維持・強化するために不可欠な取り組みです。2025年の崖や2027年のSAP問題を前に、多くの企業が迅速な対応を迫られています。

モダナイゼーションのメリットは、業務効率化やコスト削減にとどまりません。データドリブンな経営の実現や競合への優位性獲得など、企業成長を加速する戦略的投資といえます。

リプレイス、リホスト、リライトなど複数の手法から、自社の状況に最適なアプローチを選択することが重要です。現行システムの可視化、余裕のあるスケジュール設定、明確な目的の定義を通じて、成功確率を高められるでしょう。

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