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基幹システムの入れ替え失敗事例と原因!企業が陥りがちな5つの落とし穴と対策

企業の基幹システムは、受注・在庫・生産・会計・請求などを束ねる基盤です。ここが不安定になると、現場は売上を作る仕事よりも「止まった業務を回す」作業に時間を取られます。

実際、大手企業でも基幹システムの切り替え時に障害が発生し、受注から出荷までの業務が停止してしまった事例や、予算やスケジュールが大幅に超過したケースが報告されています。こうした失敗は決して他人事ではなく、どの企業にも起こりうる問題です。

本記事では、基幹システムの入れ替えに失敗した企業の事例を紹介しながら、失敗の原因と対策、そして成功に導くための具体的な進め方を解説します。これから入れ替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

基幹システムを入れ替える主なタイミング

基幹システムの入れ替えは、企業にとって簡単に決断できるものではありません。では、どのようなタイミングで検討すべきなのでしょうか。ここからは基幹システム入れ替えのタイミングについて解説します。

  • システムの老朽化・サポート終了
  • 事業拡大・業務変革への対応
  • セキュリティ強化・法改正対応

システムの老朽化・サポート終了

基幹システムを入れ替える最も一般的なきっかけが、既存システムの老朽化です。基幹システムの利用期間は、目安として14年前後と言われることが多く、この期間を超えると不要な機能やデータが蓄積され、仕様変更や追加開発が増えやすくなります。

老朽化が進むと、ベンダーのサポートが終了したり、OSやミドルウェアの保守期限が切れたりして、不具合やトラブルが発生しやすくなります。また、長年にわたる改修の積み重ねによって構造が複雑化し、システム全体がブラックボックス化してしまうケースも少なくありません。

このような状態では、問題が起きた際に原因を特定できず、対応が後手に回る可能性が高まります。その結果、業務に深刻な支障をきたすリスクが大きくなります。

事業拡大・業務変革への対応

事業の拡大や業務の変革を進めるタイミングも、基幹システムの入れ替えを検討すべき重要な局面です。

海外展開や拠点の増加、M&Aなどによって業務範囲が広がると、従来の基幹システムでは処理しきれなくなることがあります。特に海外展開では、多通貨・多言語対応に加え、各国の税制や商習慣への対応が必要です。

また、DX推進の一環として基幹システムの刷新を検討する企業も増えています。デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革しようとした場合、従来型のシステムでは柔軟に対応できないケースが多いため、基幹システムの入れ替えは不可欠といえるでしょう。

セキュリティ強化・法改正対応

セキュリティの脆弱化や法改正への対応も、入れ替えを検討する重要なきっかけです。

近年はサイバー攻撃の手法が高度化しており、古いシステムを使い続けること自体がリスクになりかねません。特に個人情報や機密データを扱う企業にとって、セキュリティ対策は後回しにできない課題です。

さらに、税制改正や制度変更に迅速に対応できるかどうかも重要なポイントです。制度変更のたびに大規模な改修が必要になるようでは、運用負荷やコストが膨らんでしまいます。

基幹システムの入れ替えに失敗した企業の事例

ここでは、実際に基幹システムの入れ替えで失敗した企業の事例を紹介します。

  • 事例①:システム障害による業務停止
  • 事例②:コスト・期間の大幅超過
  • 事例③:現場の混乱と定着の失敗

事例①:システム障害による業務停止

江崎グリコなどの企業では、基幹システム切り替え時に障害が発生し、システムが安定稼働せず、受注から出荷までの業務プロセスに大きな影響が出ました。

原因の一つは、移行計画の不十分さです。想定外のトラブルが発生したことで業務停止が長期化し、顧客からの問い合わせやクレームにも発展しました。基幹システムは企業活動全体を支える仕組みであるため、一度止まると影響範囲は非常に広くなります。

旧システムから新システムへ移行する際は、業務を止めずに切り替えるための方法や、トラブル時の対応手順まで含めた設計が欠かせません。しかし、データ移行の手順やタイミング、移行中の業務継続方法が十分に検討されていなかったため、深刻な事態を招いてしまいました。

出典:当社基幹システム障害に伴うチルド商品(冷蔵品)の全品出荷再開に関するご報告|江崎グリコ株式会社

事例②:コスト・期間の大幅超過

別の企業では、当初の想定を大きく超えて、プロジェクトのコストと期間が膨らんでしまったケースもあります。

この背景にあったのが、要件定義の不十分さです。基幹システムの目的や理想像をある程度描いていても、専門的な知識が不足していると、具体的な要件に落とし込むことは簡単ではありません。その結果、開発途中で追加要件が次々に発生し、スケジュールが延び、コストも増えていきました。

想定外の機能追加や開発工数の増加によって、当初計画を大きく上回るプロジェクトになることは珍しくありません。こうした事態を防ぐには、計画段階での整理と進捗管理が不可欠です。

事例③:現場の混乱と定着の失敗

新しい基幹システムを導入したものの、現場に定着せず、かえって業務効率が落ちてしまった例もあります。

ベンダーに任せきりで進めた結果、現場の業務に合わない使いづらいシステムになってしまったケースや、十分な教育が行われず混乱を招いたケースです。多くの場合、入れ替えの目的や理想像が曖昧なままプロジェクトが進んでいます。

また、経営方針や自社のビジョンを理解し、現場の業務に落とし込める人材が不足していたことも要因の一つです。システム導入自体が目的になり、本来目指すべき業務改善が実現できませんでした。

基幹システムの入れ替えが失敗する5つの原因

失敗事例から見えてくる、基幹システムの入れ替えが失敗する主な原因を整理します。

  • 入れ替え目的の不明確さ
  • 現場の意見に振り回される
  • 要件定義の不十分さ
  • ベンダー選定のミスマッチ
  • 移行計画の甘さ

入れ替え目的の不明確さ

基幹システムを有効に機能させるためには、「何を実現したいのか」「何を最優先するのか」を事前に整理しておく必要があります。目的が曖昧なまま導入を進めると、システムは形だけ整っても、十分な効果を発揮しません。

たとえば「老朽化したから刷新する」という理由だけで進めると、部門ごとの要望が出た際に判断軸を持てず、本当に必要な機能と、あれば便利な機能が混在してしまいます。その結果、追加開発が増え、コストや期間が膨らみます。

れ替え前に、何のための刷新なのかを社内で言語化し、経営方針と結びつけておくことが欠かせません。現状改善にとどまらず、5年後・10年後の事業変化に耐えられる姿を描けていなければ、基幹システムを入れ替える意味は薄れてしまいます。

現場の意見に振り回される

現場の声を無視してシステムを導入することはできませんが、意見を聞きすぎることもリスクになります。

プロジェクト初期に要望を集めると、「これも必要」「あれも欲しい」と要件が膨らみがちです。さらに、部門間で意見がまとまらず、調整が難航するケースもあります。

こうした状態では導入方針が定まらず、システム全体が中途半端になりかねません。現場との調整を円滑に進めるためには、責任者を明確にし、判断基準を共有したうえで対話を重ねることが重要です。

要件定義の不十分さ

要件定義が甘いと、後から追加要件が発生しやすくなり、コストやスケジュールに影響が出ます。

基幹システムの専門知識が不足していると、要件を具体化できず、ベンダー任せになってしまうことがあります。しかし、その結果、実務に合わないシステムが出来上がる可能性が高まります。

有用なシステムにするためには、何を実現したいのか、何を最優先するのかを社内で整理したうえで、ベンダーと協力しながら要件を固めていく必要があります。

ベンダー選定のミスマッチ

システムやベンダーが自社に合っていない場合も、失敗につながります。

現場が使いづらいと感じたり、導入後のサポートが不十分だったりすると、新システムは定着しません。複数社から提案を受ける際も、機能や価格だけで判断するのは危険です。

提案力の高さだけでなく、自社の課題を理解し、業務に落とし込めるかどうかを見極めることが重要です。

移行計画の甘さ

業務を止めずにシステムを切り替えるには、綿密な移行計画が欠かせません。

計画が不十分だと、業務停止やデータ移行トラブルによって、業務効率が大きく低下する恐れがあります。データ移行、業務移行、システム移行の3つの観点から、事前に十分な検討が必要です。

データ整備や移行タイミング、並行稼働の有無、他システムとの連携開始時期などを含め、早い段階から計画を立てることが成功の鍵になります。

失敗しないための基幹システム入れ替えの進め方

ここからは、失敗しないための具体的な進め方を解説します。

  • 経営ビジョンに基づいた目的の明確化
  • プロジェクト体制の構築
  • 現状分析と要件定義
  • 適切なベンダー・システムの選定
  • 綿密な移行計画とテスト実施
  • 現場教育と運用定着支援

経営ビジョンに基づいた目的の明確化

まず最初に明確にすべきことは、新基幹システムを導入する目的です。導入目的は、基幹システム入れ替えプロジェクトの成功を判断する軸にもなります。

たとえば、「システムを独自に作り込んで構築していて、当時の担当者の退職でメンテナンスできる人が少なくなっている」という問題がきっかけとなった場合、「特別な知識がなくとも、誰でもメンテナンスができるようにする」「独自のアドオンやカスタマイズ開発が発生しない仕組みにする」といった導入目的が立てられます。

検討背景をもとに、達成したいことを具体化し、導入目的を明確にしていきましょう。経営者のビジョンを知り、目指すべき姿を明確にしたうえで、これから自社が進もうとする道を見据えた基幹システムを構想することが重要です。

プロジェクト体制の構築

経営ビジョンや目的に沿って、現場の意見を踏まえた基幹システムを選定するために、プロジェクトチームを発足します。

各部門の業務における課題を把握するには、複数の部門からメンバーを集める必要があります。基本的には「システム」「現場」「経営」の観点からメンバーを集めるのが良いでしょう。各部門の専門知識や課題が分かっていて、基幹システムの入れ替えに協力的なメンバーを厳選するのがおすすめです。

ここで重要なことは、必要十分な人員の確保です。基幹システムの入れ替えにおいては、複数のベンダーとのやりとりや業務整理などで多くの工数がかかります。人員不足により、業務整理を十分にできないまま何となくで基幹システムの入れ替えが進んでしまったり、ベンダーとの調整が間に合わずに予定時期までに稼働できなかったりすることがないよう、体制を整える必要があります。

現状分析と要件定義

現状分析では、自社の業務プロセスの把握から始めましょう。既存システムの問題や制限を明確にし、業務の効率化が可能な領域を見つけることが大切です。

現在使用している基幹システムの機能、性能、問題点などを詳細に調査します。これにより、新しいシステムが満たすべき要件を明確にできます。データの質と一貫性も重要なポイントです。

そのうえで、要件定義をおこないます。自社で洗い出した要件を明確にし、それを実現できる製品を確認するため、一般的には要件をRFI(情報提供依頼書)やRFP(提案依頼書)といったドキュメントにまとめて、ベンダーに対応可否や実現方法を回答してもらいます。

適切なベンダー・システムの選定

要件を実現できる製品を確認したうえで、適切なベンダーとシステムを選定します。

自社で洗い出した要件よりも、幅広い視点で製品を選定したいといった状況であれば、情報収集を目的としてRFIを作成します。既に要件が固まっている場合には、RFPを作成し、要件に対する個別具体的な提案、正確な見積金額をベンダーに提示してもらいましょう。

ベンダー選定では、提案力だけでなく、自社の課題を理解し実務に落とし込める能力があるか、サポート体制が充実しているかなども重要な判断基準となります。また、税制改正やIT環境の変化に柔軟に対応できるシステムであるかも確認しておく必要があります。

綿密な移行計画とテスト実施

基幹システムの切り替えは、規模が大きいほど影響範囲が広がります。失敗を避けるには、入念なシステム移行計画を立てる必要があります。

特に以下の観点を踏まえて、準備を進めることが重要です。データ移行ではデータの整備や変換、移行のタイミングなどを検討します。業務移行では並行稼働の検討や業務の切り替え時期などを決めます。システム移行では他システムとの連携開始や旧システムの終了時期などを計画します。

また、本番稼働前には十分なテストを実施しましょう。単体テスト、結合テスト、総合テストと段階を踏んで、システムが正常に動作することを確認します。想定外の事態にも柔軟に対応できる体制を整えておくことが大切です。

現場教育と運用定着支援

新しいシステムを導入しても、現場に定着しなければ意味がありません。現場への教育を十分におこない、スムーズな移行を支援する必要があります。

操作マニュアルの整備やトレーニングの実施、問い合わせ窓口の設置など、現場がシステムを使いこなせるようサポート体制を整えましょう。また、稼働後も定期的にフォローアップをおこない、問題点や改善要望を吸い上げることが重要です。

システムを導入することがゴールではなく、それを使って業務改善を実現することが本来の目的であることを忘れてはいけません。

入れ替え成功のために押さえるべき3つのポイント

最後に、基幹システムの入れ替えを成功に導くために特に重要な3つのポイントを紹介します。

  • 経営層の強いコミットメント
  • 段階的な移行アプローチ
  • 継続的な改善体制の構築

経営層の強いコミットメント

基幹システムの入れ替えを成功させるには、経営層の強いコミットメントが不可欠です。

プロジェクトメンバーの中には、経営に携わる人間も入れるといいでしょう。経営方針や自社のビジョンまでを理解し、実務に落とし込めるメンバーが必要です。また、経営層が明確な方針を示し、プロジェクトを推進する姿勢を見せることで、現場の協力も得やすくなります。

現行システムの改善だけを目指すのではなく、これから5年、10年先の会社の成長につながるシステムを構築するという意識を、経営層がもつことが重要です。

段階的な移行アプローチ

多くの企業は、レガシーシステムをすべて新しいものに入れ替えるのではなく、移行可能なシステムから徐々に刷新していく手法をとっています。

このアプローチには、リスクを分散できるというメリットがあります。一度にすべてを入れ替えると、トラブルが発生した際の影響が大きくなりますが、段階的に進めることでリスクを最小限に抑えられます。

また、最近のシステムの多くは特定の業務機能に特化したものが多く、システム間でデータを連携する機能をもっています。機能特化型のシステムを使って業務機能ごとに移行していくことで、属人化していたり部署間で独自に発展してしまった業務をシンプルにすることもできるでしょう。

継続的な改善体制の構築

基幹システムの入れ替えは、稼働したらそれで終わりではありません。継続的な改善体制を構築することが重要です。

法改正や市場変化への対応が必要な場合もあります。また、使っていくうちに新たな課題や改善要望が出てくることもあるでしょう。こうした変化に柔軟に対応できる体制を整えておくことが、長期的な成功につながります。

定期的に利用状況を確認し、問題点や改善要望を吸い上げる仕組みを作りましょう。そして、それをもとに継続的にシステムを改善していくことで、投資効果を最大化できます。

まとめ

基幹システムの入れ替えは、企業にとって大きな投資であり、失敗した場合の影響は計り知れません。しかし、適切な準備と進め方を理解していれば、失敗のリスクを最小限に抑えられます。

入れ替えが失敗する主な原因は、目的の不明確さ、現場の意見に振り回されること、要件定義の不十分さ、ベンダー選定のミスマッチ、移行計画の甘さの5つです。これらを避けるためには、経営ビジョンに基づいた目的の明確化から始め、適切なプロジェクト体制を構築し、綿密な計画のもとで進めることが重要です。

また、経営層の強いコミットメント、段階的な移行アプローチ、継続的な改善体制の構築という3つのポイントを押さえることで、成功の確率を高められます。基幹システムの入れ替えを検討している方は、本記事で紹介した失敗事例と対策を参考に、自社に最適な進め方を検討してください。

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