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モダナイゼーションとは?意味をわかりやすく解説!手法と進め方の完全ガイド

デジタル技術の進化により、企業のITシステムは急速な変化を求められています。しかし、多くの日本企業では20年以上前に導入されたシステムを使い続けているのが現状です。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、レガシーシステムの刷新が進まない場合、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘しています。この「2025年の崖」を回避し、DX推進の基盤を整備するために必要なのが「モダナイゼーション」です。

本記事では、モダナイゼーションの基本的な意味から、具体的な手法、進め方、成功のポイントまで、体系的に解説します。自社のシステム刷新を検討する際の参考にしてください。

モダナイゼーションとは何か

モダナイゼーションは、老朽化したITシステムを最新の技術環境に適応させ、企業の競争力を高めるための取り組みです。単なるシステム更新にとどまらず、ビジネス価値を創出するための戦略的な変革といえます。

ここでは、モダナイゼーションの意味を理解するための基礎知識を整理します。

  • モダナイゼーションの意味をわかりやすく解説
  • レガシーシステムとの関係
  • DX推進における位置づけ
  • マイグレーションとの違い

モダナイゼーションの意味をわかりやすく解説

モダナイゼーション(Modernization)とは、直訳すると「近代化」「現代化」を意味します。ビジネスにおいては、古くなったIT資産(ハードウェアやソフトウェア)を、現在のニーズに合わせて最新の製品や設計構造に置き換えることを指します。

たとえば、1990年代に構築された在庫管理システムを、クラウド技術やAIを活用した最新システムへ刷新することがモダナイゼーションです。重要なのは、既存システムに蓄積されたデータや業務ノウハウといった「情報資産」を活用しながら、システム構造を変革していく点です。

レガシーシステムとの関係

レガシーシステムとは、新技術の登場によって相対的に古くなってしまったITシステムのことです。モダナイゼーションは、このレガシーシステムが抱える課題を解決するための手段といえます。

レガシーシステムの主な特徴は、長期間の運用により複雑化・ブラックボックス化が進行、古い技術基盤に依存、カスタマイズの繰り返しで保守性が低下、最新技術との連携が困難といった点です。モダナイゼーションにより、これらの課題を解消しながら、蓄積されたデータという企業資産を活用できます。

DX推進における位置づけ

モダナイゼーションは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するための基盤整備として位置づけられます。DXを進めるには、まずレガシーシステムの刷新が不可欠です。

モダナイゼーションはレガシーシステムの最新化と機能・性能向上を目的とし、DX実現のための前提条件となります。一方、DXはデジタル技術活用によるビジネスモデル変革と新価値創出を目指す、企業全体の変革プロジェクトです。

モダナイゼーションが成功すればDXの実施が容易になり、DXが進むことでモダナイゼーションの必要性が高まるという相互関係にあります。

マイグレーションとの違い

マイグレーション(Migration)は「移行」を意味し、モダナイゼーションと混同されがちですが、目的と手法が異なります。

モダナイゼーションは既存の資産を活用しつつシステム構造を変革することを指し、マイグレーションは既存のシステム構造を変えずにデータやシステムを新たな環境へ移行することを指します。

たとえば、オンプレミス環境からクラウド環境へシステムをそのまま移す場合はマイグレーションです。一方で、その過程でアプリケーションを最新のプログラミング言語で書き直したり、システム設計を見直したりする場合はモダナイゼーションとなります。

モダナイゼーションが必要とされる背景

企業がモダナイゼーションに取り組む背景には、レガシーシステムがもたらす深刻なリスクと、急速に変化する技術環境への対応があります。

ここでは、なぜ今モダナイゼーションが急務とされているのか、その背景にある3つの要因を解説します。

  • レガシーシステムのリスク
  • 技術環境の急速な変化
  • グローバル競争への対応

レガシーシステムのリスク

レガシーシステムを放置することは、企業経営に深刻なリスクをもたらします。経済産業省の「DXレポート」では、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性を指摘しています。

主なリスクは、システム維持管理コストの高騰、ブラックボックス化による属人化、セキュリティリスクの増大です。レガシーシステムでは、IT予算の約8割が保守運用に費やされており、新規投資や業務改善に回せる予算が極めて限定的です。また、COBOL言語など古い技術に精通した技術者は減少の一途をたどっており、人材確保がますます困難になっています。

出典:ITシステム「2025年の崖」の克服と DXの本格的な展開

技術環境の急速な変化

近年のIT技術の進化スピードは目覚ましく、企業システムに求められる要件も劇的に変化しています。クラウドコンピューティング、マイクロサービスアーキテクチャ、コンテナ技術、AIや機械学習の進展など、新たな技術が次々と登場しています。

従来のモノリシックなシステム構造では、迅速なサービス改善、他システムとの柔軟な連携、データ活用、モバイル対応、グローバル展開といった現代的な要件に対応できません。モダナイゼーションにより、こうした最新技術を取り入れやすいシステム構造へと変革できるのです。

グローバル競争への対応

少子高齢化が進む日本では、国内市場の縮小が避けられません。企業が持続的な成長を実現するには、グローバル市場への参入が不可欠です。

レガシーシステムでは、多言語・多通貨対応の困難さ、現地法規制への迅速な対応の遅れ、グローバルでのデータ統合・分析の困難さといった課題が生じます。モダナイゼーションによりシステムの柔軟性と拡張性を高めることで、グローバル市場でも競争力を発揮できる基盤が整います。

モダナイゼーションの5つの手法

モダナイゼーションには複数のアプローチがあり、目的やコスト、期間によって最適な手法が異なります。自社のシステムの状況や目指すゴールに応じて、適切な手法を選択することが成功の鍵となります。

  • リホスト(リフト&シフト)
  • リライト(リファクタリング)
  • リビルド(再構築)
  • リプレイス(置き換え)
  • リアーキテクト(再設計)

リホスト(リフト&シフト)

リホストは、既存システムのアプリケーションやプログラムには手を加えず、ハードウェアやOS(基盤)のみを新しい環境に移行する手法です。「リフト&シフト」とも呼ばれ、最もシンプルで低リスクなアプローチです。

メインフレームで動作しているCOBOLプログラムを、プログラム自体は変更せずにオープン環境やクラウド環境へ移行する場合がこれに該当します。短期間・低コストでの実施が可能で業務継続性を維持できますが、古いプログラムやアーキテクチャがそのまま残り、最新技術の活用が困難というデメリットがあります。

リライト(リファクタリング)

リライトは、既存システムのプログラムロジックや仕様は維持しながら、プログラミング言語を最新のものに書き換える手法です。COBOLからJavaへ、古いバージョンの言語から新バージョンへの書き換えなどが典型例です。

業務仕様は変わらないためユーザーへの影響が少なく、最新のプログラミング言語により保守性が向上します。ただし、既存システムの設計構造は残るため、抜本的な改善は限定的です。

リビルド(再構築)

リビルドは、既存システムの業務要件は踏襲しながら、システムを根本から再構築する手法です。最新のアーキテクチャや開発手法を採用し、技術的負債を一掃できる抜本的なアプローチです。

マイクロサービスアーキテクチャへの移行、クラウドネイティブな設計への転換などが含まれます。最新技術を全面的に活用でき、システムの拡張性・保守性が大幅に向上しますが、大規模な開発となりコストと期間が大きくかかります。

リプレイス(置き換え)

リプレイスは、既存システムを完全に廃止し、新しいシステムに置き換える手法です。特に、パッケージソフトウェアやSaaS(Software as a Service)に切り替えるケースが典型的です。

自社開発の販売管理システムを、SalesforceやSAP ERPなどのパッケージ製品に置き換える場合がこれに該当します。パッケージ製品の機能をすぐに利用でき、開発期間が短縮できる一方、自社独自の業務プロセスへの対応が困難な場合があります。

リアーキテクト(再設計)

リアーキテクトは、システムのアーキテクチャ(設計思想や構造)を根本から見直し、最新の設計パターンに基づいて再構築する手法です。リビルドよりもさらに抜本的に、システム全体の設計思想を刷新します。

モノリシックなシステムをマイクロサービスアーキテクチャに分割する、サーバーレスアーキテクチャに移行するなどが該当します。最新のアーキテクチャパターンを採用でき、スケーラビリティが大幅に向上しますが、最も大規模で複雑なプロジェクトとなり、高度な技術力が必要です。

モダナイゼーションがもたらす5つのメリット

モダナイゼーションを実施することで、企業は多面的なメリットを享受できます。

ここでは、モダナイゼーションがもたらす代表的な5つのメリットを解説します。

  • 運用・保守コストの削減
  • 業務効率化とスピードの向上
  • セキュリティ強化
  • DX基盤の整備
  • 人材リソースの最適化

運用・保守コストの削減

レガシーシステムの最大の課題は、膨大な運用・保守コストです。モダナイゼーションにより、IT予算の大部分を占めていた保守費用を大幅に削減できます。

経済産業省の調査では、多くの企業でIT予算の約8割が既存システムの維持管理に費やされています。クラウド移行による従量課金制への転換、自動化ツールやモニタリング機能による保守作業の効率化、ドキュメント整備による改修時間の短縮など、多角的なコスト削減効果が期待できます。

業務効率化とスピードの向上

モダナイゼーションにより、業務プロセスの効率化とビジネスのスピードアップが実現します。市場変化への対応スピードが競争力を左右する現代において、これは極めて重要なメリットです。

マイクロサービスアーキテクチャやアジャイル開発により、新機能を数週間から数ヶ月でリリースできるようになります。また、RPAやAIを活用した業務自動化が容易になり、定型作業を大幅に削減できます。

セキュリティ強化

サイバー攻撃が高度化・巧妙化する現代において、セキュリティ強化は企業の存続に関わる重要課題です。モダナイゼーションにより、最新のセキュリティ技術を導入し、脆弱性を大幅に低減できます。

多要素認証、暗号化通信、アクセスログの記録といった現代的なセキュリティ対策を標準的に実装できます。クラウドサービスでは、セキュリティアップデートが自動的に適用されるため、常に最新の防御が維持されます。

DX基盤の整備

モダナイゼーションは、単なるシステム更新にとどまらず、DX推進の基盤を整備します。データ活用やAI導入といった先進的な取り組みを可能にする土台ができあがります。

データを統合的に管理し、AI・機械学習による高度な分析が可能になります。またAPI連携により、外部サービスや社内の他システムと柔軟に連携でき、新しいサービスやツールを迅速に導入できます。

人材リソースの最適化

モダナイゼーションにより、限られた人材リソースを最適に配分できるようになります。レガシーシステムの保守に費やしていた時間と労力を、より価値の高い業務に振り向けられます。

Java、Python、クラウド技術などを扱える技術者は豊富で、採用が容易になります。システムの保守性向上により保守業務に必要な工数が削減され、空いたリソースを新機能開発やビジネス改善に投入できます。

モダナイゼーションの進め方

モダナイゼーションを成功させるには、計画的かつ段階的なアプローチが不可欠です。

ここでは、モダナイゼーションを効果的に進めるための5つのステップを解説します。

  • 現状分析と資産仕分け
  • モダナイゼーション方式の選定
  • ロードマップの策定
  • 段階的な実施
  • 運用定着と継続的改善

現状分析と資産仕分け

モダナイゼーションの第一歩は、既存システムの現状を正確に把握することです。技術スタック、システムアーキテクチャ、コード品質を評価し、各システムの業務への影響度、利用頻度、将来的な改善ニーズを確認します。

これらの分析結果に基づいて「資産仕分け」をおこない、ビジネス影響度、技術的負債の大きさ、費用対効果、実施難易度などの基準で優先順位をつけます。

モダナイゼーション方式の選定

システムごとに最適なモダナイゼーション手法を選定します。業務要件の変化度合い、技術的課題の深刻度、予算・期間の制約、技術者のスキルセットを総合的に評価します。

仕様が頻繁に変わるシステムはリビルド、安定しているシステムはリホストやリライトが適しています。

ロードマップの策定

モダナイゼーション方式が決まったら、具体的な実施計画を策定します。影響が限定的なシステムでパイロット実施し、成功事例を作ってから重要システムに着手する流れが一般的です。

3ヶ月、6ヶ月、1年といった節目ごとのマイルストーンを設定し、進捗を可視化します。システム障害やスケジュール遅延といったリスクを洗い出し、対策を準備しておくことが重要です。

段階的な実施

ロードマップに基づき、実際のモダナイゼーション作業を段階的に進めます。MVP(実用最小限の製品)の考え方を取り入れ、必要最小限の機能から着手します。

新旧システムの並行稼働期間を設け、データや処理結果を比較検証することで、移行後のトラブルを最小限に抑えられます。要件定義やテストの段階から現場メンバーを巻き込むことも重要です。

運用定着と継続的改善

システム移行が完了したら、新システムの運用を定着させ、継続的に改善していきます。ユーザー教育とサポート体制を整備し、運用監視体制を構築します。

効果測定と改善のサイクルを回し、コスト削減や業務効率化といった目標に対する実績を定期的に測定します。コードレビューの徹底、ドキュメントの更新など、システム品質を維持する活動を継続することが重要です。

モダナイゼーション成功のポイント

モダナイゼーションを成功に導くには、技術的な側面だけでなく、組織的な取り組みも不可欠です。

ここでは、モダナイゼーションを成功させるための4つの重要なポイントを解説します。

  • 経営層の理解とコミットメント
  • 適切なパートナー選定
  • 既存資産の可視化
  • 業務改革との両輪での推進

経営層の理解とコミットメント

モダナイゼーションの成功には、経営層の強いコミットメントが不可欠です。IT部門だけの取り組みではなく、経営戦略として位置づけ、全社的に推進する必要があります。

数千万円から数億円規模の投資判断が必要であり、組織横断的な調整が求められます。また、長年使い慣れたシステムを変更することへの現場の抵抗を乗り越えるため、経営層が変革の必要性を明確に示し、組織全体を牽引することが重要です。

適切なパートナー選定

モダナイゼーションの実施には、高度な専門知識と豊富な経験が必要です。信頼できる外部パートナーと協業することが成功の鍵となります。

同業種や類似規模のプロジェクト経験があるかという実績と専門性、密なコミュニケーションを取れる協業体制、トラブル発生時のリスク対応力、保守や継続的改善を含めた長期的な関係構築の視点が重要です。

既存資産の可視化

モダナイゼーションを適切に進めるには、既存システムの全容を正確に把握することが不可欠です。レガシーシステムはブラックボックス化していることが多く、可視化自体が大きな課題となります。

リバースエンジニアリングツールを活用した設計書の整備、プログラム分析による依存関係の把握、業務フローとシステムの対応関係の明確化、技術的負債の定量化が重要な取り組みです。

業務改革との両輪での推進

モダナイゼーションを単なるシステム刷新で終わらせず、業務改革と連動させることで、真の価値を生み出せます。システムを変えるタイミングこそ、業務プロセスを見直す絶好の機会です。

現行業務プロセスの棚卸し、ベストプラクティスの導入、リアルタイムなデータ分析による意思決定の高度化、アジャイル開発やDevOpsといった現代的な開発手法の導入による組織文化の変革が有効です。

まとめ

モダナイゼーションは、レガシーシステムを最新の技術環境に適応させ、企業の競争力を高めるための戦略的な取り組みです。経済産業省が指摘した「2025年の崖」を回避し、DX推進の基盤を整備するために不可欠といえます。

リホスト、リライト、リビルド、リプレイス、リアーキテクトという5つの主要な手法があり、システムの特性や目的に応じて最適なアプローチを選択する必要があります。運用・保守コストの削減、業務効率化、セキュリティ強化、DX基盤の整備、人材リソースの最適化といった多面的なメリットが期待できます。

成功のためには、現状分析と資産仕分け、適切な方式選定、ロードマップ策定、段階的な実施、運用定着と継続的改善という計画的なプロセスが重要です。また、経営層のコミットメント、適切なパートナー選定、既存資産の可視化、業務改革との両輪での推進といったポイントを押さえることで、プロジェクトの成功確率を高められます。

自社の状況を見極め、戦略的にモダナイゼーションを推進することで、デジタル時代の競争力を確保できるでしょう。

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