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AS/400とは?基幹システムで使われ続ける理由とサポート終了後の選択肢をわかりやすく解説

AS/400

AS/400とは、IBMが提供するオフィスコンピューターで、長年にわたり企業の基幹システムを支えてきたプラットフォームです(AS400と表記されることもあります)。発表から35年以上が経過した現在も、金融・製造・流通など幅広い業界で稼働を続けています。

一方で、OSであるIBM i 7.3の延長サポートが2026年9月30日に期限を迎え、使い続けるか移行するかの判断を迫られている企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、AS/400の基礎知識から基幹システムとして使われ続ける理由、サポート終了のリスク、モダナイゼーションの選択肢まで、流通・小売業の情報システム部門や経営層に向けて解説します。自社の基幹システムを見直す際の参考にしてください。

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AS/400とは

AS/400とは、IBMが1988年に発表した中規模企業向けのコンピュータで、オフコン(オフィスコンピューター)と呼ばれる製品群のひとつです。ハードウェア・OS・データベースが一体となった統合設計を採用しており、導入後すぐに安定した処理を始められる点が評価され、販売管理や在庫管理、会計といった基幹業務を長年担ってきました。

現在はOSが「IBM i」という名称に変わり、IBM Power Systems上で提供されています。AS/400という名前は正式には過去のものですが、呼び名として広く定着しているため、今もAS/400(IBM i)と併記されるケースが一般的です。名称の変遷を整理すると以下のようになります。

年 出来事
1988年 IBMがAS/400を発表
2000年 IBM eServer iSeriesに改称
2006年 IBM System iに改称
2008年 IBM Power Systemsに統合され、OSの名称がIBM iに変更

流通業においては、店舗や物流拠点から集まる大量のトランザクションを安定して処理できることから、受発注・在庫・売上管理などの基幹システム基盤として多くの企業に採用されてきました。開発言語はRPGやCOBOLが中心で、数十年にわたり改修を重ねながら運用されているシステムも珍しくありません。

AS/400が基幹システムとして使われ続ける理由

AS/400が長期にわたり基幹システムに選ばれてきた背景には、設計思想に根ざした明確な強みがあります。ここでは代表的な3つの理由を紹介します。

  • 高い安定性と信頼性
  • 強固なセキュリティ
  • 過去の資産を活かせる互換性

高い安定性と信頼性

AS/400は、高い安定性と信頼性があることから基幹システムの心臓部として採用されてきました。ハードウェア・OS・データベースが一体で設計されているため予期しないエラーが起こりにくく、24時間365日の連続稼働を前提とした業務でも安心して使用できます。

受発注や在庫管理のように、止まると事業全体へ影響が波及する業務では、稼働の安定性がシステム選定の最優先事項になります。数十年にわたり基幹業務を支え続けてきた実績そのものが、AS/400への信頼の裏付けです。障害の少なさは、保守にかかる現場の負担軽減にもつながってきました。

強固なセキュリティ

強固なセキュリティも、AS/400が選ばれ続ける理由のひとつです。設計段階からセキュリティを重視した構造をもち、アクセス制御や権限管理の機能を標準で備えているため、不正アクセスや外部からの攻撃に対して高い耐性を発揮します。

基幹システムには、取引先情報や売上データなど、漏えいが許されない情報が集中します。そのため、機密性を重視する金融機関などでも長年採用されてきた実績があり、セキュリティ面の評価は現在も揺らいでいません。

過去の資産を活かせる互換性

過去の資産を活かせる互換性は、AS/400のもっとも特徴的な強みです。TIMI(Technology Independent Machine Interface)と呼ばれる仕組みがハードウェアとアプリケーションの間に入り、古いプログラムを書き直さずに新しい環境で動かせるよう設計されています。

たとえば、1990年代に開発したRPGのプログラムが、最新のIBM i上でそのまま稼働するケースもあります。ハードウェアを更新しても業務アプリケーションを作り直さなくてよいという継承性が、長期利用の土台となってきています。

加えて、メモリとストレージを一体的に扱う単一レベル記憶により、開発者が記憶領域の場所を意識せずに済む点も、運用のしやすさを支えています。

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AS/400を使い続けるうえでの課題

一方で、AS/400には長期運用ならではの課題も顕在化しています。現在多くの企業が直面している代表的な3つを整理します。

  • 技術者の不足と高齢化
  • システムのブラックボックス化
  • 保守コストの増加とハードウェアの老朽化

技術者の不足と高齢化

技術者の不足と高齢化は、AS/400を運用する企業に共通する深刻な課題です。開発の中心言語であるRPGを扱えるエンジニアは導入期を支えた世代に偏っており、退職によって社内から知見が失われるケースが増えています。

若手エンジニアがRPGに触れる機会は少なく、新たな人材の育成も容易ではありません。担当者が辞めたらシステムの中身を誰も説明できないという属人化は、障害対応の遅れや改修の停滞に直結します。外部ベンダーとの連携や、複数人で知識を共有する体制づくりを早めに進めておくことが大切です。

システムのブラックボックス化

システムのブラックボックス化も、見過ごせない課題です。長年の改修でプログラムが複雑化する一方、設計書やドキュメントの更新が追いつかず、内部構造を把握できる人がいない状態に陥りやすくなります。

皮肉なことに、古いプログラムがそのまま動き続けるAS/400の互換性の高さが、中身を見直す機会を奪い、ブラックボックス化を進行させる側面もあります。発生の仕組みや対策は「ブラックボックス化とは?システムで起こる原因とリスク、わかりやすく解説」で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。

保守コストの増加とハードウェアの老朽化

保守コストの増加とハードウェアの老朽化も、運用を続けるほど重くなる課題です。対応できる技術者が限られることで人件費が上がり、老朽化したサーバーは交換部品の調達に時間と費用がかかるようになります。

保守と維持に予算と人手を取られ続けると、新しいIT投資にリソースを回せません。基幹システムの維持費が経営の足かせになる前に、刷新の計画を立てておく必要があります。

IBM i 7.3の延長サポート終了と放置するリスク

AS/400のOSであるIBM iのサポートは、標準サポートと、有償の延長サポート(Service Extension)の2段階です。IBM i 7.3の標準サポートはすでに2023年9月30日に終了しており、延長サポートも2026年9月30日で期限を迎えます。主なバージョンのサポート状況は以下のとおりです。

バージョン 標準サポート終了日 延長サポート
IBM i 7.3 2023年9月30日(終了済み) 2026年9月30日まで
IBM i 7.4 2026年9月30日 2026年10月1日〜2029年9月30日(有償)
IBM i 7.5/7.6 未発表 ―

注意したいのは、2026年9月30日に7.3の延長サポート終了と7.4の標準サポート終了が重なる点です。7.4は2026年4月30日に販売も終了しており、古いバージョンにとどまる余地は急速に狭まっています。IBMは7.3向けに2028年9月30日までの追加延長も案内していますが、通常の保守料金に加えてその3倍にあたる延長料金が必要で、合計すると通常時の4倍の水準に達します。延命するほど割高になる構図です。

サポートが切れたOSを使い続けると、セキュリティ修正の提供が止まり、脆弱性が放置されたまま基幹業務を動かすことになります。これにより内部統制の監査で指摘を受けるおそれもあり、経営リスクとして無視できません。最新の期限はIBM i 移行パスとライフサイクル(IBM公式)で確認してください。なお、モダナイゼーション全体の考え方や手法は「モダナイゼーションとは?意味をわかりやすく解説!手法と進め方の完全ガイド」で解説しています。

AS/400モダナイゼーションの選択肢

IBM iの旧バージョンのサポート終了への対応としてモダナイゼーションが考えられます。自社の状況によって最適解が変わるため、ここでは代表的な4つの選択肢を紹介します。

  • 最新のIBM i環境へのアップグレード
  • 段階的なマイグレーション
  • パッケージ・ERPへのリプレイス
  • 再構築(リビルド)

最新のIBM i環境へのアップグレード

AS/400のサポート終了への対応として、最新のIBM i環境へのアップグレードが考えられます。現在の業務フローを変えずにサポート切れを解消できるため、現場への混乱も最小限に抑えられます。具体的には、OSをサポート対象の7.5や7.6へ更新し、必要に応じてハードウェアも最新のIBM Powerへ入れ替えます。

この方法は移行リスクが小さく短期間で完了する反面、RPGやCOBOLで書かれた資産と技術者不足の課題はそのまま残ります。現行システムに大きな不満がなく、まずは時間的な余裕を確保したい企業に向いた選択肢です。

段階的なマイグレーション

次の選択肢は段階的なマイグレーションです。既存の資産を活かしながら周辺機能から順次新しい環境へ移行していく方法で、Web連携や帳票などの周辺システムをJavaをはじめとするオープン系技術やクラウドへ切り出し、中核のロジックは稼働させたまま少しずつ置換します。

一括での刷新に比べると業務停止のリスクが低く、投資を分散できる点がメリットです。手法ごとの違いや選び方は「マイグレーションとリプレースの違いとは?手法・コスト・選び方をわかりやすく解説」で整理しているので、検討の際に役立ててください。

パッケージ・ERPへのリプレイス

AS/400の基幹システムを廃止し、市販パッケージやクラウドERPへ乗り換える方法もあります。業務プロセスを標準に合わせて見直せるため、属人化した業務の棚卸しやガバナンス強化の機会にもなります。

ただし、長年のカスタマイズで作り込んだ独自業務をパッケージで再現しようとすると、費用と期間が想定を大きく超えるケースもあります。自社の業務がパッケージの標準機能とどこまで合うか、事前に見極めなければなりません。

再構築(リビルド)

再構築(リビルド)は、既存の業務ロジックを整理したうえで、新しい技術基盤でシステムを作り直す方法です。自社の業務に合わせた設計の自由度がもっとも高く、長期的なIT資産として育てられます。

一方で、4つの選択肢のなかでは費用と期間の負担が最大で、要件定義の精度がプロジェクトの成否を左右します。どの方法を選ぶか迷う場合は、以下の観点で整理してみましょう。

重視する条件 向いている選択肢
期限まで時間がない・予算を抑えたい 最新のIBM i環境へのアップグレード
業務を止めずにリスクを分散したい 段階的なマイグレーション
業務標準化やガバナンス強化を優先したい パッケージ・ERPへのリプレイス
独自業務が多く長期の資産にしたい 再構築(リビルド)

AS/400のモダナイゼーションを成功させるポイント

AS/400のモダナイゼーションを成功させるには、現行資産の棚卸やドキュメント整備、段階的な移行、そして信頼できるパートナー選びが重要です。

  • 現行資産の棚卸しとドキュメント整備
  • スモールスタートでの段階移行
  • 業務知見をもつパートナーの選定

現行資産の棚卸しとドキュメント整備

現行資産の棚卸しとドキュメント整備は、モダナイゼーションの第一段階です。どのプログラムがどの業務を支えているのか、使われていない機能はどれかを可視化しなければ、移行範囲もコストも正確に見積もれません。

長年の運用では、なぜ存在するのか誰も説明できない処理が積み重なりがちです。移行を機に本当に必要な業務だけを仕分ければ、新しいシステムに古い非効率を持ち込まずに済みます。

スモールスタートでの段階移行

スモールスタートでの段階移行は、失敗リスクを抑えるポイントです。会計や販売管理など優先度の高い領域から着手し、半年から1年単位で範囲を広げていけば、現場の負担と手戻りを最小限にできます。

逆に、最初から移行範囲を広げすぎたプロジェクトは、スケジュール遅延と現場の疲弊を招きやすい傾向があります。基幹システム刷新でつまずきやすい点は「基幹システムの入れ替え失敗事例と原因!企業が陥りがちな5つの落とし穴と対策」でも紹介しているので、計画前に確認しておきましょう。

業務知見をもつパートナーの選定

業務知見をもつパートナーの選定も、プロジェクトの成否を左右します。AS/400からの移行にはRPGなどのレガシー技術への理解と、移行先の業務・システム双方の知見が求められるため、価格だけで依頼先を選ぶと後工程のやり直しで割高になりかねません。

自社と同じ業種での実績、移行後の伴走体制、要件を整理しながら提案できる力を確認してから依頼先を決めましょう。とくに流通業では、受発注・在庫・店舗運営など業務が複雑に絡み合うため、業界特有の商習慣を理解しているかどうかが重要な判断材料になります。

まとめ

AS/400は、1988年の登場以来、高い安定性とセキュリティ、過去の資産を活かせる互換性を武器に、流通業をはじめとする多くの企業の基幹システムを支えてきました。現在もIBM iとして進化を続けており、プラットフォームそのものが終わるわけではありません。

一方で、IBM i 7.3の延長サポートは2026年9月30日に終了し、同日には7.4の標準サポートも期限を迎えます。技術者不足やブラックボックス化といった構造的な課題も踏まえると、現状維持のまま判断を先送りする余地は年々小さくなっています。

アップグレード・段階的マイグレーション・リプレイス・再構築のどれを選ぶにしても、現行資産の棚卸しと段階的な進め方が成功の土台です。自社の業務特性に合った移行方針を早めに固め、余裕をもってサポート終了の節目に備えましょう。

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この記事の監修者

林 亨

林 亨

はやし とおる

株式会社ブライセン 物流流通本部 
流通営業部

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